2025/05/22 (更新日:2025/05/22)

なぜニセコだけが世界リゾートになったのか

選書100候補

  • 「ニセコバブルは、なぜ起きたのか?」

なぜニセコだけが世界リゾートになったのか 「地方創生」「観光立国」の無残な結末
著者:高橋 克英
出版:2020年12月
長さ:184ページ
出版社:講談社

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  • こんにちは。さこまです。2024年1月1日から1日1冊のマーケティング書評ブログを始めました。マーケティング歴14年です。ホームページ制作会社を経営してます。

    ブログの毎日更新で3ヶ月目に月100万売上、6ヶ月目に1000万円を超えました。
    Amazonランキング100位以内のマーケティング本を参考に記事を読んだあなたが実践できて、豊かになる方法を伝えます。

本書は、富裕層マーケットの開拓に挑戦し、世界最高級のスキーリゾート地となり、地方創生や町おこしに成功したニセコについて書かれた本です。

ニセコは、北海道虻田郡に位置する自然豊かな町で、世界的にも名高いスキーリゾート地として知られています。特に世界有数の「パウダースノー」と称される雪質の良さから、オーストラリアをはじめとする海外のスキーヤーや観光客に長年愛されてきました。

しかし、「地域社会としての成功かどうか」は意見が分かれています。なぜなら、急速なリゾート化によって、住民が住めなくなるほどの状況となったからです。

  • 【現代問題も含めて】
    ・倶知安町の地価は全国上昇率トップクラス。1区画数億円の別荘地も珍しくない。
    →地価の高騰により、土地や住宅を購入できなくなった。

    ・高級リゾート開発が進んだ。
    →家賃が上昇し、地元住民向けの賃貸物件が減少。借りられても手が出ない価格帯になり、長期居住が困難になった。

    ・天ぷらそばが3,500円、生ウニ1パック3万円など物価上昇で売上アップ
    →観光客向けの高価格帯で地元住民は気軽に購入できる価格帯でなくなった。(飲食店が増えたことで改善)

    ・リゾート関連の時給が2,000円を超える
    →地元の飲食店や介護事業に人が集まらず、一部の介護施設は運営継続が困難に。福祉事業の撤退で高齢の住民は住めなくなる。

    ・外国からたくさんの観光客がきてくれるようになった。
    →一冬で交通事故が多発、朝夕の通勤時間帯には渋滞も頻発している。

    ・海外から観光開発費の投資が集まる
    →町の中心部の開発は外資が主導で住民の意見が届きにくくなった。

地域創生を願い、町の経済発展を希望している方も多いと思いますが、ニセコの事業に関わる方々やその恩恵を受けやすい地元の事業者はうまくいきますが、見えないところではそうでない地元民もいるということです。

地域を活性化に取り組む方々は、下記のようなことを心に思うかもしれません。

  • ・外国人観光客を増やしたい
    ・町を活気づけたい
    ・地域ビジネスを活性化したい
    ・地域資源(自然・文化・特産品)を活かしたい
    ・若者や移住者を呼び込みたい
    ・雇用を生み出して人口減少に歯止めをかけたい
    ・外貨を稼ぎ、地域に新しい収入源をつくりたい
    ・持続可能な地域経済モデルをつくりたい

本書を読んで本当にそれが正しいのか今一度、考え直す必要があるかもしれません。

著者は、株式会社マリブジャパン代表取締役です。ニセコ歴20年で金融コンサルタントとして富裕層とかかわりがある方です。富裕層向け資産運用アドバイザーとして活躍されており、世界60か国以上を訪問。

本書を読むと、富裕層を集めるニセコからどのような視点でマーケティングをやるべきなのかがわかります。

本書から学んだこと

本書では、学びになる素晴らしい視点が2つあります。

一つ目は、「選択と集中」です。たとえば、ニセコは外国人訪問客にパウダースノーが人気です。冬以外にも夏の売上を上げるのはどうかという意見です。冬で年間売上の8割となっており、夏も売上が上がればもっと潤うというものです。

しかし、売パウダースノー以外に売りを広げると、冬の強みが薄れ新規客が減る恐れがあります。だからこそ、「選択と集中」で冬の価値を高めることで、ブランドの信頼が深まり、富裕層の別荘購入やリピーターの増加につながります。その結果、冬に訪れた人が「今度は夏も来てみたい」と思い、夏の宿泊やアクティビティの利用にもつながるのです。

二つ目は、P156にある「マーケティングより人間の意思」です。ニセコは、世界最高級のスキーリゾート地となり、どこの地域でも地方創生で成しえたい「儲けること」に大成功しました。

パウダースノーというキラーコンテンツで海外に住む富裕層のスキーをする人に「選択と集中」をしたのです。それが「本当に儲かる人」である世界の富裕層を集めました。もし、中間層も集めるようなターゲッティングをしていたなら、インバウンドはうまくいかず、安全やブランドホテルが並ぶこともなかったでしょう。すると、他の観光地との違いがなくなっていたかもしれません。

「本当に儲かるとは誰を狙うことか」
「その地域のものは誰に刺さるのか」
「どんな人間の意思が働いているか」

これらに合う「選択と集中」で第二のニセコを産み出すことができるかもしれません。

評価

  • おすすめ・・・★★★★★(経営者・マーケッターの必読書)
    読みやすさ・・★★★★☆
    学び・・・・・★★★★★(富裕層の集め方や本当のターゲッティングが学べる)

本書は、大変に素晴らしい本です。

ニセコの歴史や未来の計画が詳しく書かれており、なぜニセコがここまで成功したのかがわかります。

また、ニセコの例から我々マーケッターがこれからの時代で取るべき富裕層マーケティングがわかります。

ニセコという富裕層マーケティングの成功例を知ること、なぜ成功したのかは本書の代金からして安すぎるぐらいです。超おすすめ。

さいごに

本書を読んで、現代のニセコをみていると、シンガポール、ハワイ、インドネシアのバリ島、ドバイ、アメリカのサンフランシスコなど、急速な経済発展を遂げた地域を思い出します。

経済的な成功の裏には、地域のつながりがなくなり、経済が活性化してお金は動いたものの、文化は壊れ、地域が繁栄したのに住民が住めないほどの地価となり、物価上昇で生活がままならなくなり、地元の人たちが追い出されるケースがいます。

経済的な成功の裏には、地域住民の幸福や文化が犠牲になっているように思いました。もちろん、ニセコは、その問題に対応する政策を進めてます。

ただ、思ったことは・・・「経済は潤ったけれど、心は置き去りにされた」ということです。

そのことから、「世界で最も貧しい大統領」と知られているホセ・ムヒカ氏の演説を思い出します。

経済発展の先にはなく、幸せになるために地球に産まれたことです。本書を読むかたわら、ホセ・ムヒカ氏の本を読むこともおすすめします。

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